毎年優れたミステリー小説のベスト10(国内、海外それぞれ)を、投票形式で決めるこのミス(このミステリーがすごい!)。
30年以上続くこの企画から数多くの名作が映像化されており、ほぼ毎年1本以上は映画化もされています。
そこで今回は『このミス映画化作品でおすすめのランキングトップ10!』と題して、2000年以降のこのミス国内編でランクインした映画化作品の中から、おすすめトップ10を紹介します。
このミス映画化作品でおすすめのランキング10位~4位
それでは早速、このミス映画化作品のおすすめランキングを紹介します。
まずは10位から4位までの7作品です。
10位 64 ロクヨン(2016年)
(C)2016 映画「64」製作委員会
・このミス:2013年1位
64(ロクヨン)はクライマーズ・ハイや臨場など、数多くの作品が映画化されている横山秀夫さんの著作で、2003年の半落ち以来2作目のこのミス1位となりました。
映画は前・後編2部に渡る大作で、「ロクヨン」という符丁をつけられた昭和64年(7日間で終了)に起きた未解決の少女誘拐事件と、ロクヨンから14年後の時効目前に起きるロクヨンを模倣した偽装誘拐を描いています。
原作は登場人物が非常に多いのですが、映画も主演の佐藤浩市さんを始め、綾野剛さん、榮倉奈々さん、瑛太さん、三浦友和さんなど、日本を代表する俳優陣が結集しました。
また、特に後編は、原作とは違う結末に向かってストーリーが進行することでも話題になりました。
9位 カラスの親指(2012年)
(C)道尾秀介・講談社/2012「カラスの親指」フィルムパートーナーズ
・このミス:2009年6位
カラスの親指は直木賞作家道尾秀介さんの代表作で、受賞まで5回連続で直木賞候補となった最初の作品です。
このミス2009では本作と同時に「ラットマン」も10位に入り、道尾さんは作家別投票で1位に輝いています。
タケ(阿部寛さん)とテツ(村上ショージさん)のベテラン詐欺師コンビと、ひょんなことから家に転がり込んでくる3人の若者(石原さとみさん、能年玲奈さん、小柳友さん)が家族のように暮らすという設定。
その中で過去タケに警察に売られたことを根に持って娘を殺害したヤクザが、またもや不穏な動きを見せたことをきっかけに、5人が復讐を企てるというストーリーです。
次々に仕掛けられた伏線が続々と回収されラストにとんでもないどんでん返しが待っている、原作を踏襲したストーリーと、意外性のあるキャストが高評価されています。
8位 ソロモンの偽証(2015年)
(C)2015「ソロモンの偽証」製作委員会
このミス:2013年2位
ソロモンの偽証はこのミスで2021年現在12作品がベスト10入り、直木賞を始め、多数の文学賞を受賞しているベストセラー作家宮部みゆきさんが、9年間にも渡って連載していた長編ミステリーです。
映画は前後編の2部作で、前編はクラスメイトの転落死の第一発見者となった主人公が、殺人事件ではという疑念に対し、真相究明のために学校内裁判を開こうとする過程。
後編は前代未聞の子供だけの校内裁判で主人公が検事となり、真実を明らかにしていくというストーリーです。
主要キャストの中学生たちは1万人のオーディションから選ばれた新人俳優、中でも主役に抜擢された藤野涼子さんはこれがデビュー作でした。
原作を忠実に踏襲したストーリと共に、初々しい中学生たちのピュアな演技と、佐々木蔵之介さん、尾野真千子さん、夏川結衣さんなどの実力派が脇を固める配役の上手さが高評価されています。
7位 ユリゴコロ(2017年)
(C)沼田まほかる/双葉社 (C)2017「ユリゴコロ」製作委員会
このミス:2012年5位
ユリゴコロは56歳で遅咲きの小説家デビューを果たした沼田まほかるさんの出世作で、このミスに初ランクイン、本屋大賞にもノミネートされました。
それをきっかけに沼田さんの既存作にも大きな注目が集まり、2017年には本作と同時に「彼女がその名を知らない鳥たち」も映画化されています。
人を殺すことでしか生きている価値を見出せない女性殺人者(吉高由里子さん)の人生を、その殺人者が記した「ユリゴコロ」というノートを見つけた青年(松坂桃李さん)を読み手として、明らかにしていくというお話です。
前半はサイコキラーと言ってよいほどの猟奇さを漂わせる女性が、1人の男性(松山ケンイチさん)との出会いによって徐々に人間らしさを取り戻していきます。
その変化を繊細なスピード感で見事に演じ切っている吉高さんは必見です。
本作は過去パートと現代パートに分かれてストーリーが展開していくため、文章オンリーよりも映像化されることで分かりやすくなったという評価が多く、映像化がピタリとはまった作品と言えます。
6位 アヒルと鴨のコインロッカー(2007年)
このミス:2005年2位
アヒルと鴨のコインロッカーは、このミスにこれまで7作品がベスト10入り、その内実に4作品が映画化されている伊坂幸太郎さんの記念すべき初映画化作品です。
大学入学のために仙台に越してきた大学生(濱田岳さん)が、隣人(瑛太さん)から「本屋で広辞苑を盗む」という奇妙な計画を持ち掛けられ、それに乗ってしまいます。
この計画、実は2年前に隣人や隣人の知人が犯人と出会ったペット惨殺事件と深く関係しており、2つの事件が徐々に繋がっていくというストーリーです。
秘密が明らかになると雰囲気がガラッと変わる展開に、想像もつかないような大どんでん返しが待っているラストで、筆者の伊坂さんも「映像化は不可能だろう」と思っていた話を映画化した秀逸な作品です。
5位 孤狼の血(2018年)
(C)2018「孤狼の血」製作委員会
このミス:2016年3位
孤狼の血は新人作家の作品から選出される「このミス大賞!」も受賞経験のある、柚月裕子さんの警察小説シリーズ第1作です。
映画のストーリーは原作を踏襲しており、極悪非道の捜査を行うベテラン刑事・大上(役所広司さん)と配属されたばかりの新人・日岡(松坂桃李さん)が、ある失踪事件を追いながらヤクザ組織の壊滅に動きます。
最初は非道な捜査を繰り返す大上に反発している日岡ですが、大上が何者かに殺害された後に、全てはカタギ(一般人)を命がけで守るためのものだったことに気づきます。
ラストは大上の遺志を継ぐことを決めた日岡が大上の形見を握りしめ、ヤクザや警察上層部に巣食う「敵」と対峙します。
2021年には映画化第2弾「孤狼の血 LEVEL2」も公開され、後日談として「どうしても出たかった作品」と語る俳優さんが多く、改めて映画化第1弾の本作が見直されることとなりました。
なお、原作は全3作あり、新作映画はオリジナルストーリーでしたので、残り2作の映画化も期待されます。
4位 バトル・ロワイアル(2000年)
このミス:2000年4位
バトル・ロワイアルは中学生が殺し合うというセンセーショナルな内容から、社会的に大きな注目を浴びた高見広春さんの小説です。
バイオレンスの巨匠深作欣二監督で映画化されましたが、公開前にはある国会議員を中心に規制運動が起こり、当時の文部大臣が国会で答弁を求められるほどの騒動になりました。
この騒動がマスコミに取り上げられたことに加え、原作には登場しない教師「キタノ」役のビートたけしさんが強烈なインパクトを放ったこともあり、興行収入31億円を超える大ヒットでした。
そして、オーディションで選ばれた生徒役に藤原竜也さん、柴咲コウさん、安藤政信さん、栗山千明さんなど、現在もなお第一線で活躍されている俳優さんが起用されており、若き日の姿を見られるのもおすすめポイントです。
このミス映画化作品でおすすめのランキングトップ3
いよいよランキングベスト3の作品を紹介します。
どの映画化作品もレビューサイトの評価が高く、興行収入も10億円以上のヒット作ですので自信を持っておすすめします。
3位 告白(2010年)
(C)映画「告白」フィルムパートナーズ
このミス:2009年4位
告白は、イヤミスの女王(読んだ後に嫌な気分になるミステリー)とも呼ばれる湊かなえさんの小説デビュー作「聖職者」を第一章とする連作集です。
松たか子さん主演で映画化され、日本アカデミー賞で最優秀作品賞など4冠を達成、興行収入38億円を超える大ヒットとなりました。
ストーリーは娘(芦田愛菜さん)を殺害された中学生教師(松さん)が、犯人である自分の教え子に復讐をしながら真相に迫るというもの。
この物語は主人公目線で語られる出来事が他の登場人物の目線でも語られるため、真相が分かった時にそれぞれの身勝手さや酷さも浮き彫りになるんですね。
さすがイヤミスの女王の原作らしく、嫌な気持ちが残る結末と感じるレビューが多い中、一部にはスッキリしたという感想もあるため、観たものに不思議な感覚を残す映画と言えそうです。
2位 容疑者Xの献身(2008年)
(C)2008 フジテレビジョン/アミューズ/S・D・P/FNS27社
このミス:2006年1位
容疑者Xの献身は東野圭吾さんが直木賞を受賞した作品で、このミスでも初の1位となりました。
映画は東野さんの代表的シリーズである「ガリレオシリーズ」を原作にした、ドラマ「ガリレオ」の劇場版第1作です。
殺人事件を起こしてしまった隣人をかばう石神(堤真一さん)の純愛や、主人公湯川(福山雅治さん)と石神の深層部分での友情など、人間関係を深く描くヒューマンドラマの要素が強く、悲しく、切ないストーリーが胸に染みます。
これは余談ですが、原作の石神は不格好で女性にあまり縁のない男のため、イケメンの堤さんが演じていることに違和感を覚えたファンもいたようで、公開当時論争になった覚えがあります。
なお、2022年にはガリレオの劇場版第3弾となる「沈黙のパレード」が公開予定となっていますので、楽しみに待ちたいですね。
1位 罪の声(2020年)
(C)2020 映画「罪の声」製作委員会
このミス:2017年7位
このミス映画化作品おすすめランキング1位は、昭和最大の未解決事件「グリコ森永事件」をモチーフにした塩田武士さんの小説「罪の声」です。
事件を長年追い続けてきた塩田さんは、事件をモチーフに歴史上の事実とフィクションを織り交ぜ、自分の解釈を加えて事件を描いています。
原作を可能な限り踏襲した映画は、近年で最も実際あった事件に真正面から向き合ったと評価されています。
事件で使用された子どもの声で送られた脅迫テープが自分の声だと気づき、あの事件に思いもよらぬところで関わらされていたことに気づかされる曽根(星野源さん)。
一方、最初はただの応援要員だったものの、風化させてはいけないという考えにいたり本格的に事件を追う新聞記者・阿久津(小栗旬さん)。
この2人が徐々に交わり互いの推理が線に結ばれていく展開、そして、この事件によって人生を変えられた、変わらざる得なかった人々を深く描く人間ドラマの融合に惹きこまれます。
まとめ
今回は「このミス映画化作品でおすすめのランキングトップ10!」と題して、お伝えしました。
まとめます。
・第2位は中年男の純愛が悲しく切ない、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』
・第1位は実際の事件を作者の解釈によって区切りをつけた意欲作、塩田武士さんの『罪の声』
今回ご紹介したこのミスにランクインした映画化作品はもちろんどれもおすすめですが、まだ映像化されていない作品にも多数の秀作があるのは間違いありません。
個人的に映画化してほしいのは、2017年5位にランクインした芦沢央さんの「許されようとは思いません」です。
短編集なのですべてを映画化するのは難しいかもしれませんが、どのタイトルもヒリヒリして緊張感がありますし、展開がスリリングでスピーディなため映画化にマッチする作品と思います。
思わぬ気づきがあるかもしれませんので、皆さんもぜひ映画化してほしいという観点でこのミスのランキングを見直してみてください。
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